「中心市街地活性化」など役場の言う抽象的なテーマに、まちづくりのリーダーを目指すひとはどう向き合ったらよいでしょうか?自分の土俵で、自分のペースで質問を展開するにはどうしたらよいでしょうか?今日のテーマは、『抽象的な政策フレーズを論破する』です。
目次
溢れる抽象的な政策フレーズ
この国全体が抽象的な政策フレーズに溢れ、停滞しています・・・地方創生、少子化対策、異次元の金融緩和、女性総活躍など。
わが町もより加速して取り組むべき課題があります。「持続的な財政運営」「持続的なまちづくり」「〇〇の活性化」「美瑛高校の魅力化」「だれひとり取り残さない」など。
これらのフレーズに言えることは
いわれると軽々しく反論しにくい不思議な力がある
しかし実際には、だから何がどれほど良くなるか?といったゴール(究極的に実現したい期待効果)が町民に分かりにくい
ゴールが分かりにくければ、事業が存続する理由、廃止する理由がわからず、抜本的な事業のスリム化もできません
これからのまちづくりのリーダーは抽象的な政策フレーズに惑わされず、自分の考えで自分のペースで役場の事業に迫っていくトレーニングが必要です。今日のテーマは、『抽象的な政策フレーズを論破する』です。
政策論争用に「課題共有フレーム」を変形
抽象的な政策フレーズを論破するために、いままで使ってきた「課題共有フレーム」(下図↓↓に再掲)を変形したものを使います。(詳細のおさらいはこちらの記事)
クリックで拡大↓↓
つぎに今日のテーマに適した「課題共有フレーム」の変形について順をおって説明します。
STEP1 フレームの再定義:
課題共有フレームを変形したものが下図↓↓です。今日のテーマにあわせて記号のⒶⒷⒸⒹの意味を拡張します。
あるべき姿(目標)Ⓑ:ゴール(GOAL)と呼ぶことにします。これは『あなたはどうしたいのか』『現状をどう変えたいのか』を自分に問いかけるものです
現状Ⓐ:いままでの意味に加えて、「いま」の問題だけでなく「このまま行くと困ったことになる」などと未来に起こる問題も含めることとします
ギャップ=問題Ⓒ:前とおなじ、ⒷとⒶの差分です。
解消したいギャップ=課題Ⓓ:同じに見えても問題Ⓒと課題Ⓓは違います。すぐ後で説明します。
課題の分解と事業とのリンク:新しいコンセプトです。あとで説明します。
問題と課題の違いのおさらい:
上図でⒸとⒹの違いをきちっと理解しておきましょう。
問題はゴールを設定しない限り、いつまでも問題のままで解決しません・・・(テストに不合格だった。50/100点。合格ライン60/100点)
課題とは数ある問題のなかからあなたが選んで、解決したいレベルをあなたの意思で定義したものです・・・(総合で80/100点で合格を目指す。そのために苦手の英語と数学を70/100点、得意の国語と社会を90/100点に目標設定して、勉強スケジュールを組む)
つまり「合格を目指す」という抽象的なゴール(課題)を、アクションが可能なレベルの課題に分解する必要があります。
3つに分解する理由:
”3”のルール(Rule of Three)とも言います。
経験的に抽象的な事柄を3つの具体的な事柄に分解することでほぼ全体をあらわすことができる(現在過去未来/走攻守/天地人/政治経済社会/3C分析/3原色・・)
3つの根拠があれば崩されにくい(あるいは相手を崩せる)強固なピラミッド型の論理を構築できる。ひとつ崩れてもふたつは残る。2つの根拠は崩れやすい。4つはまとまりが悪い。
中心市街地の活性化とはなにか?と訊かれて、長々した文章でなく、シンプルな3つのポイントで見える化できる。実現するためのストーリー(戦略)を説明できる。
変形フレームを「中心市街地活性化」に応用
百聞は一見に如かず。私がつくった「中心市街地活性化」の変形「課題共有フレーム」(下図↓↓)を見てください。作りかたは
GOALの「中心市街地活性化」はこの場合そのまま課題に置き換えられます。言い換えが必要なものもあります。
「中心市街地活性化」は抽象的なので、その実現に必要な究極的な3つの具体的な中課題①②③を具体的に考えます。・・・上から下に考える
つぎに、これらの3つの中課題①②③が実現すれば、中心市街地の活性化が実現すると言えるかどうかを検証します。・・・下から上に逆に考える
このように上から考えても下から考えても論理が成り立つ場合、課題と中課題①②③は必要十分の関係にあると言います。
「中心市街地活性化」を達成する必要十分条件は、①(消費力)インバウンド経済が増加②(人口力)町民交流が増加③(生産力)産業創出が増加というのがわたしの主張です。チームでいろいろな案を出して戦わせ、もっとも強力なものを見つけて採用します。
中課題→小課題→最後に事業
「中心市街地の活性化」に紐付いた中課題①の「インバウンド経済が増加」を実現するために必要な3つの小課題を考えます。逆方向の検証も行います。→必要十分条件か検証する。
インバウンド経済が増加(町内での消費力を増加)するために必要な3つの究極的な小課題を考えます。
丘エリアに殺到する人流を駅北エリアに吸引(集客)します・・人流をあらわすKPI
吸引した人流を駅北エリアから旧市街地に還流し、町内の滞留・滞在時間を増やします・・人流をあらわすKPI
駅北エリアと旧市街地の人流を夏冬の通年型に平準化します・・人流をあらわすKPI
この3つの小課題は、中課題①の「インバウンド経済が増加」のための戦略シナリオです。できるかどうかではなく、やらねばならないという意味で戦略と呼びます。そしてヒト・モノ・カネを動かす町の事業はこの戦略に従います。
・・・チームでいろいろな案を出して戦わせ、ホワイトボードに書いてもっとも強力なものを採用します。
ここで留意したいのはまだ事業内容のはなしが出ていないことです。これで正常です。事業ありきではなく、戦略ありきだからです。
町民として「どうなったらいいか」、役場として「何を実現したいか」、つまりゴールが先にくる・・・これは戦略目標です
ゴールを達成するための課題の構造をロジックツリーであらわし、必要十分条件を満たすように検証する・・・これは戦略シナリオです
アクション可能なレベルまで分解した小課題に適した事業を設定する。・・・事業ありきと批判されません。※事業ありきではじめても、あとで適切に課題が分解して事業が紐付いていれば問題ありません。
質問の演習
質問の前に、課題ー中課題ー小課題からなる課題の構造(ロジックツリー)をあらかじめ組み立てておけば、
(Y/N)の答えを求める質問が組立てやすくなります
自分の土俵で相撲が取れます。必ずしもロジックツリーの正解はありません。相手のツリーと自分のツリーのどちらに説得性があるかということだけです。完全なツリーでなくても「どう考えていますか?」と聞くよりはるかに良いことです。
町民として不慣れな事業の話は、質問のやり取りで課題の構造の全体像(前提条件)を明らかになってから訊きます。事業の良し悪しの判断がシンプルになります。
今回の質問は、中課題①のゴール「インバウンド経済が増加」に照らして、駅北エリアのマルシェとトレーラ宿泊施設が適していないと個人的に思っているので、そこに論点を誘導します。
中心市街地の活性化と言えるために究極的に必要な要素を3つあげるとすれば、一にインバウンド消費、二に生産販売、三に人口の維持だと思います。これらは相乗効果の関係にあると思いますが、いかがですか?(Y/N)。・・・間違っていれば直してもらう。
インバウンド消費を増やすためには、①丘エリアから人流を吸収し、町外からの新たな人流を増やし、②市街の滞在時間を増やし、③夏冬の通年型観光の平準化ができりような駅北エリアであるべきですが、いかがですか?(Y/N)。・・・間違っていれば直してもらう。
インバウンドの消費を増やす点について。・・・今回の「中心市街地活性化の事業構想」では駅北エリアを「まちなかに集積する高ポテンシャルな場」「迎え入れる呼び込む顔づくり」と打ち出しています。フラノマルシェは最初の3年間で200万の来客があったと報じられています。駅北エリアの初期の集客見込みを何人で見ていますか?(数字)
駅北エリアの役割は、その場における消費の増加はもとより、丘エリアのオーバーツーリズム(観光公害)の人流を駅北に吸引し、白金エリアにサイクリングで分流する、また駅前商店街に分流することが求められるのではないか?(Y/N)
とすれば、フラノマルシェ並みに200万人以上を集客する設計が必要ではないか?(Y/N)
マルシェのつくりと集客規模の設定は関係が強いです。夏だけのテント営業で200万人は可能なのか?(Y/N)
マルシェは一体、美瑛選果を超えるものを目指しているのか、ふるさと市場なみを目指しているのか?(Y/N)
観光客を吸引し滞留と滞在時間をのばすために、夏冬の常設フードコート、夏は並木の木陰の癒しスペース、冬は並木のイルミネーションなどが考えらるが、原案の根本からの見直しが必要ではないか?(Y/N)
トレーラハウスの目的は、夏場の町内の宿泊キャパを補うという意味か?(Y/N)
令和 5 年度の夏場の宿泊客延数は、7・8 月の各 25,000 人泊、6・9 月 の各 15,000 人泊)ですが、このトレーラハウスの月間の収容人数はいくらか?(数字)
現状の宿泊キャパを補うというにはこの収容人数は中途半端ではないか?(Y/N)
冬は空き地になってしまう。常設のフードコートや観光客の雪遊びスペースとか、宿泊キャパより、消費をもっと増やすアイデアがあるのではないか?(Y/N)
なぜこの場所になければいけないのか?理由を3つ挙げるとすれば?(根拠)
以上のように、あらかじめ課題を分解してピラミッド型のロジックツリーをつくっておけば相手の答えをチェックしたり、臨機応変に質問を考えたりできますよという事例でした。
最後にわたしの事例のようにきれいなツリーを作れないと言うひとに。慣れるまでは上の事例で少なくとも、課題(ゴール)→中課題までは考えるトレーニングをしましょう。小課題は歯抜けがあっても作ってみましょう。
3つのボックスをつくって、自分で書き込めないものは空白にしておきます
質問のなかで相手にそこを訊いて空白に書き込みます
それをみながらつぎの質問を続けます。なるべく事業は最後に。
この投稿に対する質問などをお寄せください。今後の投稿のなかでお答えできるようにいたします。
参考資料
今回はここまでです。
2024-7-20 Noriaki Gentsu @ NorthQuest(ノース・クエスト)・・Quest=探求する
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