インバウンドはいつ戻るのか、いま中国で起きていることをマッキンゼーの5月11日づけレポートから学ぶ。ニューノーマルの時代の美瑛の観光の参考のために、本レポートを要約した。原文(PDF)のグラフは転載できないので、対応した(Exhibit 番号)から原文のグラフを参照のこと。
マッキンゼー報告書
The way back: What the world can learn from China’s travel restart after COVID-19 May 11, 2020 | Article
ー要約ここからー
中国のCOVID-19は終息、旅行がひとまず再開。本稿は、どう回復しているか、中国人旅行者の将来の旅行計画、業界の対応について見る。世界の国や地域でパンデミックのピークを過ぎつつかある。中国の経験が他国における旅行の回復という点で、期待できることできないことの参考になればよい。
■How tourism in China is restarting (中国のツーリズム再開状況)
中国のロックダウンが終了しCOVID-19の新たな感染報告はゼロ。
ビジネスは慎重ながら、ほとんどすべてのオフィス、学校、小売店が開いた。
旅行の呼び物についても同じ。
弊社の最新の中国消費者意識の調査では信頼が戻り、2週間前に比べ安心して仕事に戻る人が増加。
ロックダウンが終わって、最初に人々がお金を使ったのが外食。二番目が旅行。
弊社の消費者調査では、この2週間で国内旅行に対する信頼が60%増加。(Exhibit 1)
5月のメイデー連休の旅行者数は、2019に比べ53%減、
しかし4月の連休には2019年に比べ61%減だったものから改善
Exhibit 1-省略
現状、旅行はすべて国内。国境は閉鎖。
海外からの渡航者に14日間の検疫を自宅あるいは国営施設で実施。
国際線は航空会社1社につき週一便に制限、危機以前より90%以上の座席数の減。
ホテルの稼働率と国内フライトの席数は徐々に回復。(データExhibit 2)
しかし、旅行の形が危機の前に比べいくつかの大事な点で変化。
Exhibit 2-省略
➀Domestic, even regional 国内、しかも地方へ
旅行者はいまだに慎重。旅行者は自宅の近くを選好~車や電車で地方の目的地に行く感じ。
飛行機での旅行の回復はもっと遅い~メーデー連休の目的地のトップリストで判明。
昨年は中国のハワイ(Sanya)が首位。今年はTOP10に出てこない
上海、広州、北京がTOP3。
"Staycation"(滞在型)も人気だ。 (データExhibit 3)
Exhibit 3-省略
この消費者意識の調査から言えること:
3時間以上の距離でも車を使った安全な国内旅行に対し信頼感。
②Younger Travelers 若い旅行者
COVID-19はシニア層や医療に恵まれない人々に厳しい影響。
若者や単身の層はアフターコロナ先陣、自由に旅行を再開(データ(Exhibit 4)
パンデミック後初の休日(4月初め)お墓参りで旅行ー予約の60%が30歳以下で、昨年比で43%も増加。
Exhibit 4-省略
③Economy product without sacrificing comfort心地よさを犠牲にしないエコノミー商品
旅行者の人口構成や、全体的な経済状況の変化は、消費動向にも反映。
中級のエコノミーホテルは危機のあいだ比較的よく、リバウンドもより速い (データExhibit 5).
Ctripの調査ー今年は国内旅行者の85%が1万元以下の消費ー2017年は27%
豪華ホテルー新しい消費パターンの出現、国際旅行や国際会議需要の消失の打撃、回復は最も遅い
Exhibit 5-省略
この新しい倹約志向ー必ずしも価格を求め旅行の質を犠牲にするものでない。
マッキンゼーのCOVID-19旅行意識調査のTOP2は、国際チェーンのエコノミーホテルとローカルのブティックホテルで、リーズナブルな価格と居心地のよさを兼備。
■What's coming next? つぎに来るもの
この調査から明らかになった、回復の道のりにおける4つのトレンド
➀Peak recovery after September 9月以降の回復
ごく少数の大胆なひとは初夏からの旅行、大多数の人は9/末から10/初の国慶節まではあえて計画せず 多数にとって次の旅行の時期の決定根拠ー専門家のアナウンス(54%)、学校の全面開始(54%) (データExhibit 6). Exhibit 6-省略
②Outdoor, foodie, and family アウトドア、グルメ、家族
旅行者はまだ用心深く、混雑する観光スポットを避ける アウトドアの景観のよさが、これから最も人気のある目的地。 食とか家族向きの目的地もTOP3の人気。 ショッピングは人気リストの最下位にドロップ。 大多数の旅行者は次の旅行を国内で、地元から離れる計画(データExhibit 7). Exhibit 7-省略
③Self-guided and self-driven tours become dominant個人旅行が突出
団体旅行ツアーやガイドツアーパッケージは人気が劇的に低下。
次に団体旅行をしたい人10%、考えたこともない人68%。根本的な転換。
中国人の旅行客はかって団体旅行のファン、特に外国の旅行での便利さ。
いまや消費者は、団体旅行の利点と団体にはいる安全面の心配を天秤にかけている。
団体旅行を選ぶ人も、少人数を選好。31%がそうすると言い、2019年の3倍。
Exhibit 8-省略
クルーズはパンデミック前はブーム。国際旅行が緩和されても、回復の足取りは不明。
■How Chinese players are responding to these emerging trends(新トレンドに対する中国業界の対応)
旅行需要の再建のカギ ー顧客に安全だということを再確認させる。
中国の消費者の意識は、旅行業者は衛生について余り徹底していないと。
➀Ensuring physical distancing and improving hygiene 距離の確保と衛生の改善
テーマパークを含む旅行地は混雑を避けるため30-50%に入場を制限。
キャパのコントロールのため、都心の公園でも事前予約制度を導入。
入場の際、政府発行のグリーンQRコード(旅行歴と潜在的なウイルス接触)を提示
ホテルの手順も変更、例えばレストランのビュッフェを廃止、テーブルの間隔など。
スタッフ全員がPPEを着用。ホテルによっては客にも求める、あるいは勧める。
多くのホテルでエアコンを止め、ジムや屋内プールを閉鎖。
航空機では、雑誌や新聞がなくなった。
食物や飲物は、旅行客がパッケージにしたスナックと瓶入りの水をもらう。
空港は乗客がついた時と搭乗の直前に体温を測る。
チェックインの時は健康QRコードが求められる、また一定の空港で着陸後にも。
いくつかの航空会社は急増する顧客要望を賄う商品の立上げ~1度限りのラウンジパス、超過料金で隣を空席に。
②Aggressive pricing promotion 意欲的な価格の促進
航空会社、ホテル、旅行企画、オンライン旅行社は将来を見越した、需要の刺激と収益増加を図る
中国の大手オンライン旅行予約会社Fliggy~メーデー期間の航空券価格は昨年比30%低下
ホテルやオンライン旅行会社の先行販売~上海の5つ星ホテル2泊で999元、6月末の支払い
③Engaging customers through latest social media 最新のSNSによる顧客の取り込み
WeChatとウェイボは新しいだけでなく、旅行ビジネスのMUSTチャンネル
パンデミック後、若者が年配より旅行に興味を持ち、先行する業界はこれらを新しいチャンネル(Taobaolive と TikTok)で取り込み。
旅行先の販売のため、CEO自らライブストリーミングでホストを演じる。
この種のマーケッティングはいくつかの業者にとって採算が合っているようだ。
James Liang(Ctripの創業者)による最新のライブストリーミングのキャンペーン~1時間の放送で1000万元の販売。
■What can the world learn from this?世界が学べること
回復は国によって違うが、共通的なテーマ~人々はそれでも旅行がしたい。
多くのひとが「リベンジ旅行」と呼んでいる。(おそらく旅行業で最も打撃を受けた)アメリカのクルーズ船の予約は2021年も依然として強い。
国際的な調査結果も中国と似ている。
ー国内旅行がまず戻る。
ー国際旅行、特に飛行機を使うものは回復に相当時間がかかるだろう。
ー国内市場が少ない国の旅行業界~ゆっくりした回復で近隣国から迎え入れるだろう。
他の国でも中国と同じように旅行は戻るだろうと考える。
ー若い人が先に動く。
ー近場の旅行になるだろう。
ーエコノミー旅行がより早く回復するだろう
ーアウトドアや自然のある目的地が、密集した都市より人気になるだろう
初期の回復需要を取込むため、旅行業界は早期に回復するマーケット(国内と地方)に資源を迅速に展開すべし。
手順とか旅行商品は変更する必要がある。
セルフサービス、ディスタンシング、それに新しい洗浄のルールは、顧客と従業員の健康だけでなく、顧客の信頼を取り戻し、長距離の国際旅行の回復の基礎となる。
最後ながら大事なことは、商品内容、コミュニケーション、販売チャンネルは、変わりゆく顧客構成に適合したデザインに変えていかねばならない
旅行は回復する。早期に柔軟に動けば、旅行者のニーズの変化によりよく適合できる。
中国の回復の兆しが旅行産業全体にとって役に立つ教訓となる。
―要約おわりー
まとめ
このブログが、NewNormal時代のツーリズムに確実に変化が起きる前提で、美瑛のいままでの観光のあり方や対応を改善するきっかけになれば幸いだ。
特に、アウトドア・グルメ・個人旅行という新しいニーズに対し、社会的距離と衛生を保つこと、新しいSNSチャンネルを活用することなど、新しいことを採り入れたい。
まずは国内客から新しい対応とし、将来のインバウンドの基盤を固めるというこのレポートの考えは美瑛にとっても当てはまるだろう。
(Noriaki Gentsu @ NorthQuest)
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